「ビュウ、ねえビューウ!」
「きゃうう……」
「あっ、先にサラマンダーが起きちゃった。ごめんね?」
静かな夜には少しばかりうるさい、高く甘える声が頭上に響く。それもビュウを呼んでいるとなれば自分が対応しなければと顔を上げたその目線の先で、メロディアははにかむと小さく首をかしげたのだった。
黒い絵の具を一面に広げたような夜空に輝く幾千の星を天井に、今日もビュウとサラマンダーはともに眠っていた。
いや、本当は毎日こうなればいいなという彼女なりの願望だった。
「天気の良い日はこうして寝ていたいんだ」
そう弁明したビュウの横顔に、サラマンダーはどんなに寒い日でも暖かく包んであげようと決心したものだった。
だが実際ビュウの行動はある意味言葉の通りであり、宣言から夜毛布一枚を手に甲板に現れてはドラゴンの懐で眠るようになった。――すべてのドラゴンに対して極力平等に、である。
「ぐふー……」
「うーん、出直してきた方がいいかなー」
だからこそせっかく訪れた二人の時間を邪魔されたことに、サラマンダーは腹が立っていた。だがそれはメロディアにも、肝心のビュウにも届かない。
よく見ればパジャマに着替えてすらいないメロディアが悩みながら足踏みをしている間に、懐で眠っていたはずのビュウがのそのそと起き出したのだった。
「……メロディア、どうしたんだ?」
冬の大六角形
ビュウとメロディア、それとサラマンダー。
明日の分へと続きます。
20210207