Novel / 冬の大六角形


   「ビュウ! ……起きちゃった?」
ぴょんとメロディアは飛び上がり、頭をぐるりと回ってビュウの前に立った。眠い目をこすりながらも、彼の笑顔が持ってきていたランプの明かりに照らされる。
 「いいや、うとうとしていただけだから平気さ。そこは寒いだろ?」
 「きゃふ?!」
思いもよらないビュウの行動に、メロディアよりサラマンダーが先に驚いた。肩までかけていた毛布を取ったかと思えば、最初から隣が空いているかのように地面を叩いたのだ。
 「うーん……いいの?」
一方のメロディアも戸惑ってはいたが、そうは言いながら表情は喜びに緩みちゃっかりランプをどけるとビュウの横に腰を下ろしたのだった。

 「ありがと、ビュウ。だいすき!」
 「どういたしまして。さて……」
メロディアの弾む声もさらっと流して、ビュウは再び毛布をかぶり直した。それくらい外は寒いからこその行動で他意はないはずだ。そう受け取って、サラマンダーは仕方なく地面に顔を落ち着けた。
 「こんなに寒いなんて外に出てくるなんて、後でゾラが黙ってないぞ」
 「だったらビュウだって。大人ってずるいよね!」
 「参ったな。降参だよ」
口先をとがらせながら、メロディアはビュウの行動をとがめた。ように見えたが二人は笑顔で会話を交わしあっている。こうして軽口をたたけることが信頼の証だと思えばこそ、サラマンダーは落ち着いていられた。

 「あのね、今すっごく星がきれいでしょ?」
 「ああ、確かに」
 「むー。でねでね、あの中に冬のダイヤモンドがあるってドンファンが言ってたんだよ!」
メロディアの弾む声に、ビュウはわずかに眉に皺をよせて空から視線を落とした。わずかに唸ったかと思うとため息とともに目をつむる。彼の悩みの種の一つでもあるのだろう、それは抑揚のない声からも読み取れた。
 「――メロディアは声をかけられてないかい?」
 「だいじょうぶ! ……なのかな? 今ドンファンはね、ジャンヌとルキアに夢中なんだって!」
 「全く……。メロディアは構うんじゃないぞ。それでその冬のなんたらってのはだな――」
 「ダイヤモンドだよ! ねえねえ、どれどれ?」
ビュウの気遣いに大きく頷くと、メロディアはきらきらと目を輝かせて上体を浮かせた。ついでとばかりにますます身を寄せる姿に、サラマンダーの瞼はぴくりと跳ね上がったのだった。
冬の大六角形
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ビュウとメロディア、それとサラマンダー。
ドラゴンが好きという理由で乱世に身を投じることになった彼女だけど、戦争終わった後おとなしく国に帰った……とも思えなくもないんですがどう思います?(質問系)
20210208



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