Novel / お菓子をくれなきゃ君をください

ハッピーハロウィン ラッシュとトゥルースの場合


 言うなれば、それは振り子のように。
 ラッシュがなにやらソワソワしている。
 普段から落ち着きがないと思われているラッシュだが、トゥルースから見ればそれはいつも通り。
 そうでないラッシュが一体どんなものかと言えば――
 「……先程から見ていれば、一体何を考えているんですかラッシュ」
 「!! トゥルース、お前見てたなら言ってくれよ!」
 ラッシュはがばりとトゥルースに顔を向けると、のしのしと大股で近づいてきた。

 トゥルースがラッシュを見守っていたのはかれこれ五分ほど。
 その時間をひたすら目で追っていたのだとすれば、相当トゥルースも暇なのだろうか。
 それにすら気づかないラッシュは、一体何を考えていたのか?
 トゥルースが口を開くより早く、彼の前に立ったラッシュは手のひらを広げて見せた。
 その中から出てきたのは、一枚のくしゃくしゃに丸まった紙。
 「これは……?」
 訝しげに紙に視線を落とすトゥルースに、ラッシュはその紙の皺を伸ばし始める。
 そして紙に徐々に表れたそれは、……どう好意的に表現しても落書き以外の何物でもなかった。

 「落書き……ですよね?」
 「これが落書きに見えるのかよ」
 「落書きでなければ何だというのです」
 「トゥルースにはこれが『でざいんが』に見えないのかよ!」
 「デザ…… デザイン画?!」
 ラッシュの口からおおよそ出てこないであろう単語に、トゥルースはかけていた眼鏡を落としかけてしまった。
 慌てて眼鏡をかけ直すトゥルースを、得意げな表情で見ているラッシュ。
 「俺が作れる訳はないんだけどよー、ビッケバッケに頼んだらどうにかならねーかなと思って」
 「ビッケバッケに……何をですか?」
 「だからこれだよこれ!本当に見てわかんねーのか?」
 「だから落書きだと」
 「落書きじゃねーよ!仮装の衣装だっつーの!」
 「仮装……。 あっ」
 トゥルースは思わずぽんと手を打った。ラッシュはやっとか、と言いたげににやりと笑った。
 「やっと分かったかー、トリックオアトリート♪」


 「……ラッシュはいつも悪戯ばかりしている気もするんですが」
 「なんだよトゥルース、今度は狼男で襲って欲しいってか、よっ!」
 小さくため息をつくトゥルースの後ろから、不意をついて抱きつくラッシュ。
 そして言葉を失って思考停止しているトゥルースの唇を一気に奪う。
 ……一秒、二秒、三秒。
 「ん、んっ」
 「ん」
 予め決めてあったかのような呻き声。ラッシュはそっと唇を離すと尚も嬉しそうに言葉を紡ぐ。
 「Trick or Treat! Trick or Treat! お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ♪」
 「全く、またこれから忙しくなりますね」
 苦々しく、それでも微笑みを浮かべながらトゥルースはラッシュの頬にそっと口づけを返した。


 ある、秋の平和な一こま。

お菓子をくれなきゃ君をください
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要は最後の方が書きたかっただけでーす!!
 最初はラシュトゥルとか書かなくてもいいんじゃないかと思えるノーマル具合でサーセン。
 そこからのギャップが!欲しかった!なんという私得。喜んで頂ければこれ幸い。
2012/11/01 02:42:51



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